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【 開催しました 】 第26回 教育(共育)講演会

不信感から信頼感へ
―「信じる力」が人間的成長を促す
元 法務省矯正局所管少年院院長  中野 レイ子 氏
10月26日、 於 岡山県医師会館

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 10月26日、岡山県医師会館にて第26回教育(共育)講演会を開催しました。この講演会は広く地域の皆さま、学校関係者の皆さまにも参加いただくことで、企業の内外に「共に育つ土壌をつくる」ことを目的に開いているものです。今回は、会員企業、学校関係者、一般の皆さまを含む280人(会員企業から192人)を超える方々の参加があり、会場はほぼ満席でした。
 主催者あいさつとして山辺啓三代理事が登壇し、「中小企業にとって人の育成は非常に重要な課題。この講演会が参加された皆さまにとって明日からの力となれば」と述べました。続いて来賓の岡山県教育委員会教育長の鍵本芳明氏、岡山市教育委員会学校教育部長の岡林敏隆氏から祝辞をいただき、講演が始まりました。
今回は「元少年院院長が語る!信じる力 不信感から信頼感へ〜寄り添うやさしさと、立ち向かう強さと」と題し、少年院や刑事施設等法務省所管矯正施設に36年間勤務された中野レイ子氏にご講演いただきました。
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 講演の冒頭、中野氏は会場の客席に降り、「自分が親の立場だったとして、子供が問題行動をとったらどう対応するか」具体的なシチュエーションを提示し、参加者にその対応について問いかけながら本題に移っていきました。
 事件を起こした子供たちは、家庭裁判所で家庭での保護か鑑別所での保護かが決められ、処分の審判を受けます。講演では、審判の結果、少年院送致になった子供たちがどんな生活をしているのかについて話がありました。中野氏は、送致された少年に初めて面談する立場で向き合ってきました。そして彼らに共通する、「大人に対する不信感」に気付きました。それ以降、少年院の職員に「信頼に値する大人であってほしい」と頼み、子供たちには初めて非行に関わった頃の自分を振り返る内省をさせ、少年院にきていなかったらどうなっていたかを想像させ、危機感を持たせてきたと言います。「不信感のある相手にいくら語りかけても、思いは伝わらない。自分が他者に影響を与えることのできる存在だと気づけたときが、人間的成長の第一歩。まず不信感を取り除き、目の前の相手のありのままの姿を受け止めて、信頼感を育てることが重要」と語りました。
 最後に河本泰政実行委員長が閉会あいさつに立ち、「不信感の裏にある疎外感を存在感に変える―家庭や職場にも活かせることではないでしょうか。今日の学びを地域の中に活かしましょう」と締めくくり、閉会となりました。  \;

26回 教育(共育)講演会に参加して(参加者感想文より抜粋)

【会員企業】
●少年院の先生と子どもの関係を経営者と社員さんの関係に照らし合わせて考えました。経営者が信頼に値する人間でなくてはならない。経営者の社員さんへの対応の仕方が社員さんの価値観や人生観を作るなど、自分の今までの振る舞いに反省しきりでした。
●人間尊重の経営を目指している私たち経営者に大きなキーワードをいただきました。それは「信じる力」をさらに養い、実践してゆくことでした。不信感を信頼感へ、疎外感を存在感に変えてゆく努力を私たちは熱い思いで実践してゆくことを誓います!
●信頼関係で結ばれた会社にするためにもまず、社員の自己肯定感を高めたいと思います。経営のヒントになりました。
●特に不信感の裏側には疎外感があるという点に納得しました。何か良くないことが起こった際には何故起こったのかをきちんと相手の気持ちになって問う事が大切だと理解しました。少年院に関しての話は初めて聞いたので、実際のエピソードを踏まえてイメージしながら聞くことができ、良い機会になりました。

【学校教職員】
●「信頼の無いところに教育は成立しない」―。私の思いもまさに同じです。心打つお話に感銘を受けました。明日からの元気をいただきました。
●「大人への不信感を感じたまま教育は成り立たない、まず大人が信頼に足る人間にならなければならない」という言葉にハッとさせられました。一つ一つの言葉や会話から信頼を得られるよう、相手を認める姿勢を大切にしようと感じさせられました。欲を言えばもう少し更生内容などを聞きたかったです。

【一般】
●冒頭の「大人が子どもに何を教え、何を伝え、その積み重ねがこどもの人生観、価値観を作っていく」という言葉に大変感銘を受けました。
●子どもが大人を信じられなくなる。その過程にどれだけ傷つき、悲しみ、裏切られてきたのだろう。不信感を怒りや非行という行為に変えて子どもたちはメッセージを大人と社会に訴えている。少年院のリアルな日常や先生方の関わりを知る機会は無かったので、話を聞きながら少年院の中でこれだけの変化や成長をするのは凄いことだと思いました。不信感を信頼感へどうつなげていくのか、どう寄り添い、どんな言葉がけが子どもの心に届くのか、もっと先生方の取り組みや関わり方の話が聞きたかったです。  \;

実行委員長ごあいさつ

26回 教育(共育)講演会 実行委員長 河本 泰政(こうもと法律事務所 弁護士)  \;

第26回教育(共育)講演会を開催できましたことをあらためて御礼申し上げます。また、当日は280人を超える方の参加をいただけましたことも感謝申し上げます。

今回、中野レイ子先生から、「元少年院院長が語る!『信じる力』―不信感から信頼感へ〜寄り添うやさしさと、立ち向かう強さと」をテーマにご講演をいただきました。講演では、少年院での教育の実態と、その中で変わっていく少年たちの話を分かりやすくお話しいただきました。その中で特に大切にしなければならないことは、やはり相手に「疎外感」を感じさせるのではなく、「存在感」を感じさせることができるかどうか、ではないかと思います。これは少年院だけでなく、家庭、会社、地域いずれでも当てはまるものだと思います。また、この「疎外感」というものは、言っている本人は気がつかないけれど、相手はそれを敏感に「否定されているもの」と感じてしまうものなのだとも思います。相手に対し、どのような共感を持ち、また認めることができるかということが相手に「存在感」を感じさせ、認めることができ、信じることができるのではないでしょうか。

今回の講演を機に、皆様のそのような「信じる力」を養うきっかけとなれば幸いです。

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